断熱等級を上げると光熱費が安くなる」とよく聞きます。でも、夏の冷房代にも本当に効果があるのでしょうか?
ヒノキヤグループ(桧家住宅)が東京大学・前真之准教授の監修のもと、2025年夏に行った実大実験の結果が、なかなか興味深い内容だったので取り上げます。
※ 本記事は「HINOKIYAレポート VOL.2」(2026年5月公表)をもとに作成しています。
どんな実験だったのか
実際に建てた戸建住宅で、断熱等級5と等級6を比較した実験です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 断熱等級5と等級6の戸建を各地点2棟・計6棟 |
| 場所 | 3地域(長野県佐久市)・4地域(栃木県那須塩原市)・6地域(埼玉県八潮市) |
| 断熱材 | 現場吹付発泡断熱材「アクアフォーム」 |
| 空調条件 | 全館空調「Z空調」で室温26℃に設定し終日稼働 |
| 計測期間 | 2025年夏(7〜9月) |
3つの気候の異なる地域で同じ条件の住宅を比べることで、「地域によって効果がどう変わるか」も同時に検証しています。
結果:夏に効果が出たのは1か所だけ
3地域で実験して、夏の冷房電力削減に明確な効果があったのは1か所だけでした。
| 地域 | 夏の削減効果 |
|---|---|
| 6地域・埼玉県八潮市(猛暑の関東平野部) | ✅ 明確な削減効果あり |
| 4地域・栃木県那須塩原市(那須高原) | 月200〜500円程度の差 |
| 3地域・長野県佐久市(高原・比較的涼しい) | 月200〜500円程度の差 |
夏が本当に暑い地域(関東平野部など)では効果が出やすいが、もともと夏が涼しい高原・山間部では差がほとんど出なかったという結果です。
なぜこういう結果になるのか
断熱材の役割を「魔法瓶」に例えると分かりやすいです。魔法瓶は中と外の温度差が大きいほど、効果が際立ちます。
夏の冷房(室温26℃)で考えてみると:
- 🔥 関東平野部(外気35〜38℃)→ 室内外の温度差が約10〜12℃
- 🌤️ 長野高原(外気28〜30℃)→ 室内外の温度差が約4℃程度
温度差が小さければ、断熱材の性能差も出にくい。シンプルな話です。
一方、冬は寒冷地で外気温が-5〜5℃になると、室内外の温度差は20〜25℃にもなります。だから冬は断熱等級アップの効果がどの地域でも出やすいわけです。
この実験から読み取れること
- 断熱等級アップは冬の暖房費削減に特に効果的
- 夏の冷房費削減効果は住んでいる地域の気候による
- 関東・東海・近畿など暑い地域ほど夏の断熱効果も大きい
- 高原・山間部では夏より冬に投資対効果が出やすい
- 断熱材の種類だけでなく気密性(隙間をなくすこと)も重要
よく「断熱等級6にすると年間○万円節約!」という広告を見ますが、それが成立するかどうかは住む地域の夏の暑さと冬の寒さによって大きく変わります。
住宅メーカーの営業トークをそのまま信じるのではなく、「自分の家がある地域は何地域か?」を確認してから判断するのが賢い選択です。
断熱おじさんの私見
※ここからは私の見解です。
今回の実験で使われた断熱材は現場吹付の硬質ウレタンフォーム系の断熱材です。材料メーカー勤務の立場から補足すると、吹付系断熱材は隙間なく充填できるため断熱性能と気密性を同時に確保しやすいという特徴があります。
今回の実験で「断熱等級の差が小さかった」地域でも、気密性が低い(隙間が多い)住宅だったら結果はもっと大きく変わっていたかもしれません。断熱等級だけでなく「C値(気密性能)」も合わせて確認することを強くおすすめします。
また、先ほどのパナソニックの実験でも示された通り、60年後には関東の夏が現在の沖縄並みになる可能性があります。今は「涼しい地域」でも、将来的には断熱等級アップの夏の効果が大きくなる時代が来るかもしれません。長期的な視点で断熱性能を選ぶことが重要だと思います。
まとめ
- 断熱等級6の夏の効果は「暑い地域ほど大きい」
- 涼しい高原・山間部では夏の効果は限定的
- 冬の断熱効果はどの地域でも恩恵が大きい
- 断熱材の性能+気密性のセットで考えよう
- 光熱費削減だけでなく「快適・健康・結露防止」も断熱の大切な効果


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