断熱等級とは?歴史と法規制の変化、札幌・東京の性能差で読み解く日本の住宅断熱

断熱リフォーム

「断熱等級」という言葉を耳にしたことはありますか?

住宅の断熱性能を示すこの指標、実はここ数年で大きく変わっています。2025年にはついに新築住宅への適合が義務化され、2030年にはさらに高い基準が求められる予定です。

この記事では、断熱等級の歴史を振り返りながら、札幌と東京という気候の異なる2都市の断熱性能の差を具体的な数値で比較します。そして、これからの法規制の方向性と、中古住宅・賃貸選びへの影響まで考えてみます。


断熱等級とは?

断熱等級(断熱等性能等級)とは、住宅の断熱性能を1〜7の数字で示した指標です。数字が大きいほど断熱性能が高く、光熱費が抑えられ、快適な室内環境が保たれます。

性能の指標として使われるのが**UA値(外皮平均熱貫流率)**です。

UA値の数字が小さいほど、熱が逃げにくい=断熱性能が高い

たとえばUA値が0.46の家は、0.87の家と比べて約2倍、熱が逃げにくいことを意味します。


断熱等級の歴史

1980年以前:断熱基準なし(等級1相当)

戦後から高度経済成長期にかけて建てられた住宅には、断熱に関する法的基準がありませんでした。断熱材がほとんど入っていない家も珍しくなく、冬は寒く夏は暑いのが当たり前でした。


1980年(昭和55年):初めての省エネ基準(等級2)

オイルショックをきっかけに、日本初の省エネ基準が制定されました。**「昭和55年基準」**と呼ばれます。

ただし、この基準は北海道など寒冷地を中心に設計されており、東京など温暖地域の基準はかなり緩いものでした。


1992年(平成4年):新省エネ基準(等級3)

基準が改正され、断熱性能が引き上げられました。**「平成4年基準」**と呼ばれます。


1999年(平成11年):次世代省エネ基準(等級4)

大幅な改正が行われ、**「次世代省エネ基準」**が制定されました。この基準が長らく「最高等級」として位置づけられてきました。

しかし注意が必要なのは、この基準への適合は義務ではなかったことです。努力目標であったため、この時期以降に建てられた住宅でも等級4に満たない家が多数存在します。


2022年:等級5・6・7が新設

約20年間変わらなかった最高等級(等級4)に加えて、新たに等級5・6・7が設けられました。より高い断熱性能の住宅を正式に評価できる仕組みになりました。


2025年:等級4の適合が新築住宅に義務化

2025年4月より、新築住宅(戸建て・賃貸含む)に断熱等級4への適合が義務化されました。これ以下の性能では建築確認が通らなくなります。


2030年(予定):等級5が義務化へ

さらに一歩進んで、2030年には断熱等級5が新築住宅の最低基準になる予定です。


札幌と東京の断熱性能の差

日本は気候の違いにより全国を8つの地域区分に分けており、断熱基準は地域ごとに異なります。

  • 札幌:2地域(最も寒冷な地域のひとつ)
  • 東京:6地域(比較的温暖な地域)

UA値で比較:等級1〜7・札幌vs東京

断熱等級建築年代の目安札幌(2地域)東京(6地域)
等級11980年以前基準なし基準なし
等級21980年〜0.721.67
等級31992年〜0.541.54
等級41999年〜(2025年義務化)0.460.87
等級52022年新設(2030年義務化予定)0.400.60
等級62022年新設(義務化時期未定)0.280.46
等級72022年新設(義務化時期未定)0.200.26

UA値:数字が小さいほど断熱性能が高い。単位はW/m²K


各等級で暮らしはどう変わるか

数値だけではわかりにくいので、それぞれの等級が実際の暮らしにどう影響するかをお伝えします。


等級1(1980年以前の家)

「冬は屋外と変わらないくらい寒い」レベル

断熱材がほとんど入っておらず、暖房をつけていない部屋は外気温に近い状態になります。廊下・トイレ・浴室が極端に冷え、ヒートショックのリスクが高い状態です。光熱費も非常に高くなります。


等級2(1980年〜築の家)

「暖房をつけていればなんとか暖かい」レベル

最低限の断熱はされていますが、暖房を止めるとすぐに室温が下がります。東京(UA値1.67)と札幌(UA値0.72)では基準に大きな差があり、東京の等級2の家は断熱性能がほぼないに等しい水準です。


等級3(1992年〜築の家)

「昔よりはマシだが、まだ寒い」レベル

東京(UA値1.54)と等級2(1.67)の差がわずかで、温暖地域では改善効果が限定的です。窓からの冷気や結露が起きやすく、暖房費もかさみます。


等級4(1999年〜築・2025年義務化)

「一応断熱はしている」レベル

2025年から義務化された現在の最低基準です。ただし東京(UA値0.87)は、正直なところ「十分に断熱されている」とは言いにくい水準です。冬は暖房を切るとすぐ冷える、窓周りに結露が出る、といった状態になりやすいです。


等級5(2030年義務化予定)

「エアコン1台で家中が暖かい」レベル

暖房・冷房の効きが良くなり、エアコン1台で家全体の温度が管理しやすくなります。光熱費が等級4と比べて明らかに下がり、夏の冷房効率も向上します。2030年に義務化予定で、現在の「省エネ住宅」の標準的な水準です。


等級6(義務化時期未定)

「真冬でも室温が13℃以下にならない」レベル

暖房を切った翌朝でも、室温が極端に下がらない家です。ヒートショック(急激な温度差による心臓発作)のリスクを下げる効果があるとされており、高齢者のいる家庭では特に重要な水準です。

ここで注目したいのが、東京の等級6のUA値(0.46)は、1999年当時の札幌の最低基準(等級4:0.46)と同じ数値だという点です。東京で「高断熱」と呼ばれる家が、25年前の北海道の基準と同水準というのは、日本の温暖地域の断熱がいかに遅れてきたかを示しています。

義務化の時期は未定ですが、先進的な分譲マンションや高性能住宅を手がける工務店・ハウスメーカーでは、等級6を標準仕様として採用する物件が増えています。光熱費の削減や快適性の高さが評価されるようになってきたためです。新築物件を検討する際は、ぜひ断熱等級を確認してみてください。


等級7(義務化時期未定)

「ほぼ暖房いらず、光熱費が驚くほど安い」レベル

ヨーロッパの「パッシブハウス」と呼ばれる超高断熱住宅に近い水準で、暖房をほとんど使わなくても室内が暖かい状態を保てます。現時点では建築コストが高く、対応できる工務店も限られますが、光熱費の大幅削減と最高レベルの快適性が実現できます。

等級6と同様に、先進的な高性能住宅を中心に採用が広がりつつある水準です。義務化の時期は未定ですが、2030年以降の基準引き上げの流れの中で、将来的に義務化される可能性があります。


これからの法規制の方向性

国は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、住宅の断熱性能を段階的に引き上げていく方針を明確にしています。

時期内容
2025年(実施中)等級4が新築住宅に義務化
2030年(予定)等級5(ZEH水準)が新築住宅に義務化
2030年以降等級6・7への引き上げも検討される見込み
2050年(目標)カーボンニュートラル実現

断熱等級の基準は今後も段階的に引き上げられていくことが予想されます。


(私見)建てた年代が、中古住宅・賃貸選びの重要な指標になる

ここからは断熱材メーカー勤務者としての私見です。

ここ数年で断熱基準が一気に引き上げられました。2022年に等級5・6・7が新設され、2025年に等級4が義務化、2030年に等級5が義務化予定——この変化のスピードは、過去に比べて格段に速くなっています。

こうした流れを踏まえると、中古住宅の購入や賃貸を検討する際に、「いつ建てられた家か」が断熱性能を判断する重要な指標になってくると考えています。

建築年代断熱性能の目安備考
1980年以前等級1相当ほぼ無断熱。光熱費・快適性に大きな問題あり
1980〜1991年等級2相当最低限の断熱。大幅な改修が必要なケースも
1992〜1998年等級3相当一定の断熱あり。窓・開口部の改善で効果大
1999〜2024年等級4相当(目標)義務ではなかったため未達の物件も多い
2025年以降等級4以上(義務)法的に担保された最低水準
2030年以降等級5以上(予定)ZEH水準が最低保証に

ただし、これはあくまで目安です。1999年以降でも等級4に達していない住宅は多数あります。中古住宅を購入・賃貸する際は、建築年代だけでなく、住宅性能評価書や断熱改修の履歴も確認することをおすすめします。

また、断熱性能が低い古い家でも、窓の断熱改修や断熱リフォームによって大幅に改善できます。補助金制度も活用できるので、あきらめる必要はありません。


まとめ

  • 断熱等級は1〜7まであり、数字が大きいほど高性能
  • 日本の断熱基準は1980年から段階的に引き上げられてきた
  • 同じ等級でも、札幌(寒冷地)と東京(温暖地)では求められるUA値が大きく異なる
  • 東京の「高断熱」等級6のUA値(0.46)は、1999年当時の札幌の最低基準と同水準
  • 等級6・7は義務化時期未定だが、先進的な分譲マンションや高性能住宅で採用が広がっている
  • 2025年に等級4が義務化、2030年には等級5が義務化予定
  • 中古住宅・賃貸選びでは「建てた年代」が断熱性能の目安になる時代へ

断熱リフォームで古い家の性能を改善することも可能です。
まずは複数の業者に相談してみましょう。

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UA値の基準は国土交通省の告示に基づきます。地域区分の詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。法規制の内容は変更される場合があります。

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